楽しい登山に必要な身体の機能とは?『登り』
こんにちは!トレーナーの提坂(さげさか)です!
前回の記事では、登山にはどのような動作が必要なのかを、4つの要素に分けて考えてみました。
(前回の記事はこちら)楽しい登山に必要な身体の機能とは?
今回は、その中でも「登り」について詳しく考えてみたいと思います!
登山では、階段のような段差や坂道を登っていきます。
そこで今回は、階段や坂道を登るときに、身体がどのように動いているのかを研究をもとに見ていきながら、登山に必要な身体の機能について考えていきます。
目次
階段登りはどのような身体の機能が必要なのか?
平地歩行と比較すると
・つま先から接地をする
・股関節、膝関節、足関節の関節可動域がより増大した
・股関節、膝関節を伸展する力(モーメント)が増大する。特に膝関節は平地 の約3倍になる
特に見ていきたいことは関節の可動域と力についてです。
階段を登るということは、平地を歩く時と比較し、身体を高い位置へ持っていく必要があるわけです。
そのためには、高い位置に脚をついて踏ん張って身体を持ち上げていくわけですね。
階段を登るためには、足を深く曲げた状態で足を一段上に置き、そこから脚を伸ばして身体を持ち上げていく必要があります。
”股関節・膝・足首を、自分で曲げて動かすことができるか”
この能力は上りには不可欠みたいですね。
加えて身体を上に持っていくためには、重力に負けずに力を発揮する必要があります。
その力は股関節と膝関節を伸ばすための力がより大きく必要になります。
登るためには下半身を押して伸ばすような筋が不可欠のようですね。
坂道を登ると、身体の動きはどう変わる?
では、実際に坂道を登ると、身体はどのような変化が起こるのでしょうか?
平地歩行と比較すると、
・股関節や膝屈曲角度が増大、足関節背屈が増大した。(Han et al., 2009)
・膝関節内反、股関節内外転、足関節外返しの増大がみられた。(Han et al., 2009)
・傾斜が強く(16°.24°)なるとMSt-MSwで骨盤帯の後傾が増大した。(Han et al., 2009)
これはどういうことかというと、「股関節、膝、足首をよく曲げて動かしていた」ということが明らかになっていました。
考えてみると自然なことだと思います。
坂道を登るということは、身体を高い位置へ持っていく必要があるわけです。
これは階段と同様ですね、
見ておきたい点がもう一つ。
平地と比較すると、上り動作では「股関節、膝関節、足関節も左右の動きが大きく出ていた」という点です。
上り動作は、曲げるという”前後の動き”だけでなく、”左右の動き”も必要になってくるわけです。
ここからは僕自身の考察ですが
脚を大きく曲げるためにも左右の動きが必要ですし、着いてから身体を持ち上げるためにも必要です。自分の体で試してみるとわかります。これも大きければいいわけではなく、左右の動きをコントロールしていく必要があると思います。
皆様はどこまでコントロールした状態で、立った状態で脚を上げることができますか?
上り動作に必要な能力のセルフチェック①として、片脚立ちをチェックしてみてください!
脚を自分であげられるか、左右の動きが制動できているかのチェックの 一つとなります!
関節の変化はわかりましたが、筋肉はどのような違いがあるのでしょうか?
坂道上りは、平地歩行と比較すると、
股関節、膝、足関節伸展筋力の筋活動が増大する(Franz & Kram, 2012)
平地を歩く時にも使われている筋肉ですが、登る動作においては、身体を持ち上げるためにより脚を伸ばす筋の活動が大きくなるわけです。
先ほどの脚の角度から考えると、曲げた状態から伸ばして身体を持ち上げる!ということが必要なんだと思います。
さてここまで平地と登り(階段, 坂道)の動作に必要な要素を見てきましたが、年齢によって動作が変わるのでしょうか?
若年者VS高齢者
高齢者は若年者と比較して、
・上りの段差で腰部を伸展する力(モーメント)が大きい(勝平ら, 2004)
・上りの段差では、体幹前屈角度が大きい(勝平ら, 2004)
・上りの坂道では内側腓腹筋(ふくらはぎ)の筋活動が低く、大臀筋(お尻の筋 肉)の筋活動が高い(Franz & Kram, 2013)
これらの報告からは、高齢者と若年者では、段差や坂道の上り方が違うことが考えられます。
若年者では、登る際に股関節・膝関節・足関節を使って地面を押し、身体を上へ運んでいると考えられます。
一方、高齢者では、ふくらはぎの筋活動が低く、お尻の筋活動が高くなっていました。
ここからは僕自身の考察ですが、もしかすると高齢者では、足関節だけで身体を押し上げるのではなく、股関節や体幹をより使うことで身体を上へ運ぶ動作戦略をとっているのかもしれません。
実際に、高齢者では体幹をより前に傾けて登ることが報告されています。
つまり、体幹を深く前に倒し、そこから股関節や体幹を使って身体を起こすようにして登っている可能性があります。

では、このような若年者と高齢者の動作の違いは、長時間にわたる登山ではどのような影響を及ぼすのでしょうか。
今回紹介した研究だけでは、その影響については何も言うことができません。
ただ、こうした身体の使い方の違いは、登山者の腰部への負担や腰痛を考えるうえで、ひとつの要素になり得るのかもしれません。
今回の限界
あくまで階段や坂道といった環境での研究であり、登山のようにひらけた視界で、足場の形状や大きさも様々、高さも毎回違うような段差の場合にこれが適応されるのかどうかはなんともいえないところです。
ただ、もし身体の能力(筋力や可動域、横の動きのコントロールなど)に余裕があるのならば、外の環境を把握して適応できるだけの余裕はあるのかもしれません。
身体の余裕を作っておきたいところですね。
トレーナーとして
今回調べてみることで、上りの動作についてはかなり思考が整理されてきました! ただ「スクワットをして足を鍛えましょう!」だけでは足りないことがわかりました。
コンディショニングでは、
・股関節・膝関節・足関節を、必要な範囲まで自分で動かせるか
・曲げた状態から、脚を伸ばして身体を押し上げる力を発揮できるか
・立った状態や片脚で、左右方向への動きをコントロールできるか
・身体を起こすだけではなく、地面をPushして、身体を上へ運ぶ動作ができるか
これらをチェックしながら、さらにはできるように介入していきたいと思いました!
実際の登山にはこれに疲労や荷物、地面の状態、天候など様々な要素が関わってくると思います。外部に対応するためにも、自分の「余力」を作っておく必要があると思います。
登山者の方に対してまだまだ力になれること、準備ができるところはかなりありそうです!
次回は「下り」についてやっていきます!
参考文献
Han, J. T., Kwon, Y. H., Park, J. W., Koo, H. M., & Nam, K. S. (2009). Three-dimensional kinematic analysis during upslope walking with different inclinations by healthy adults. Journal of Physical Therapy Science, 21(4), 385–391.
Franz, J. R., & Kram, R. (2012). The effects of grade and speed on leg muscle activations during walking. Gait & Posture, 35(1), 143–147.
Franz, J. R., & Kram, R. (2013). How does age affect leg muscle activity/coactivity during uphill and downhill walking?. Gait & Posture, 37(3), 378–384.
Riener, R., Rabuffetti, M., & Frigo, C. (2002). Stair ascent and descent at different inclinations. Gait & Posture, 15(1), 32–44.
勝平純司, 山本澄子, 丸山仁司, 関川伸哉 (2004). 階段およびスロープ昇降時の関節モーメントの分析. バイオメカニズム, 17, 99–109.

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